複数の相続人がいる場合には共同相続人間で被相続人の遺産をどのように分割するかを決める必要があるため、遺産分割を行います。
遺産分割協議
まずは、共同相続人全員で遺産分割についての話し合い(協議)を行うことになります。
この相続人全員での遺産分割協議において合意ができれば、法定相続分と異なる割合で相続分を定めることができ、例えば、共同相続人の1人に全ての遺産を包括的に相続させることも、被相続人の遺言が遺産分割を禁止していなければ遺言内容と異なる遺産分割をすることも可能です。
無事に遺産分割協議が整った場合は遺産分割協議書を作成し、その後、これを用い協議結果内容に応じた不動産登記名義の移転や、被相続人名義口座の払い戻しなど遺産分配の手続きを行い、これが全て終われば遺産分割手続は終了します。
遺産分割調停
ただし、共同相続人間における遺産分割協議が整わない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
調停手続では、調停委員会を介し、遺言の有無、相続人や分割対象となる遺産を確定した上で、共同相続人全員が納得できる遺産分割を話し合いで模索していきます。
遺産分割調停で話し合いが整った場合は、裁判所が調停調書を作成し調停手続としては終了します。
その後は、遺産分割協議が成立した場合と同様、この調停調書を用い不動産登記名義移転などの遺産の分配を行い、遺産分割手続は終了します。
遺産分割審判
遺産分割調停における調停委員会を介した話し合いでも遺産分割の方法などで合意が整わない場合は、遺産分割調停は不成立となり終了します。
ただし、調停不成立の場合は自動的に遺産分割の審判手続が開始され、裁判官による争点整理や事実調査が行われ、一切の事情を考慮した上で審判が下されることになります。
この審判の告知を受けた日から2週間が経過すると不服を申し立てること(即時抗告)ができなくなり審判は確定することになります。
審判が確定した場合には、確定したことの証明書(確定証明書)を裁判所で取得した上で、不動産登記名義移転などの遺産の分配を行い、遺産分割手続は終了します。
共有物分割手続
裁判外における遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判のどの段階で遺産分割手続が終わった場合でも、不動産については対立関係にある共同相続人の共有名義という結果が残ってしまう場合があります。
不動産の共有状態に納得がいかない場合は、遺産分割手続終了後、さらに共有分割手続をとることができます。
そのため、共有物分割手続のことも踏まえながら遺産分割を行っていく必要があり、遺産に不動産がある場合はこの点の注意が必要になります。