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(令和2年(行ヒ)第68号不指定取消請求事件 令和2年6月30日第三小法廷判決)
ふるさと納税制度から除外された泉佐野市が除外指定の取り消しを求めていた訴訟において、原審の大阪高裁で敗訴していた泉佐野市が逆転で勝訴しました。
結論として、法的には国が泉佐野市を除外したことは違法であるとしていますが、最高裁は泉佐野市の寄付金の集め方自体については以下のように批判的といえます。
「泉佐野市は,多くの地方団体が自律的に返礼品の見直しを進める中で,返礼割合が高くかつ地場産品以外のものを含む返礼品の提供を続けた上,本件改正法が成立した後も,本件改正規定の施行直前までの予定で,キャンペーンと称し,従来の返礼品に加えてアマゾンギフト券を交付するとして,返礼品を強調した寄附金の募集をエスカレートさせたものであり,このような本件不指定に至るまでの同市の返礼品の提供の態様は,社会通念上節度を欠いていたと評価されてもやむを得ないものである。」
また、林景一裁判官の補足意見では「結論にいささか居心地の悪さを覚えた」と、その理由を以下のように述べています。
「私は,法廷意見に同調するものであるが,本件の経緯に鑑み,上告人の勝訴となる結論にいささか居心地の悪さを覚えたところがあり,その考え方を以下のとおり補足しておきたい。
居心地の悪さの原因は,泉佐野市が,殊更に返礼品を強調する態様の寄附金の募集を,総務大臣からの再三の技術的な助言に他の地方団体がおおむね従っている中で推し進めた結果,集中的に多額の寄附金を受領していたことにある。
特に,同市が本件改正法の成立後にも返礼割合を高めて募集を加速したことには,眉をひそめざるを得ない。
また,ふるさと納税制度自体が,国家全体の税収の総額を増加させるものではなく,端的にいってゼロサムゲームであって,その中で,国と一部の地方団体の負担において他の地方団体への税収移転を図るものであるという,制度に内在する問題が,割り切れなさを増幅させている面もある。
そして,その結果として,同市は,もはやふるさと納税制度から得られることが通常期待される水準を大きく上回る収入を得てしまっており,ある意味で制度の目的を過剰に達成してしまっているのだから,新たな制度の下で,他の地方団体と同じスタートラインに立って更なる税収移転を追求することを許されるべきではないのではないか,あるいは,少なくとも,追求することを許される必要はないのではないかという感覚を抱くことは,それほど不当なものだとは思われない。それは,被上告人が他の地方団体との公平と呼ぶ観点と同種の問題意識である。」
その上で、林景一裁判官が最後に「たとえ結論に居心地の悪さがあったとしても,法的には法廷意見のとおりと考えざるを得ないのである。」と述べ補足意見を締めているところに、今回の最高裁判決のニュアンスが現れているような気がします。
結論としては国が泉佐野市を除外したことは違法であったのであり、今後、ふるさと納税制度の対象地方団体となる泉佐野市からどのような返礼品が提供されるのか、多少なりともふるさと納税を利用している者としては興味深く思っているところです。